探したが見つからず、考え過ぎだろうと缶ビールを取りに行き、またテレビの前に座る。
虐待被害者はこの先をどう生きるか、というテーマへ流れ、画面の、顔が隠された女性が話し始めた。
「コンビニが、好きなんですよ」
「いつでも開いているでしょ(笑)」
「辛い時は、引き寄せられる様に入ってしまうんです」
首元や手元だけ映されているが、音声を変えていても少しだけ、トーンが上がっているのが伝わる。
「私コンビニにはいい思い出しかなくて…」
缶ビールを片手に持って飲まずに固まったまま、壮亮は観入っている。
「子供の頃よく行っていて、店の人がみんな優しかったんですよ。お母さんは忙しいから「寂しい」とか言えなくて、だからつい行っちゃう。お小遣いだけは充分貰えていたので」
缶の冷たさを感じなくなって、目の回りに血流が集中し、ぼやける視界で画面を見ながら、それでもまだ壮亮は[違うよな]と核心に辿り着かない。
その女性の口元が映り、綻んでこう言った。
「コンビニって、愛でしょ?」
ーーーーーーーーーーーーあぁ、凪子だ、
やっぱり凪子だ。
そう思って気が付いたら壮亮は涙を流していた。
こんな事思ったらいけないのだろうが、これ程辛い目に遭ったのが凪子でなければいいと願ったが、
口元と言い回しが、
紛れもなく凪子だった。
(続く👻)