門限を破る気は全く無かった。
高校生で午後六時までに帰らなければいけないのは早過ぎると思うが、従う方を選んだのは自分だ。
しかしアクシデントは起こる。轢き逃げ事故を目撃し、警察官に情報を提供していたら随分と時間が過ぎてしまった。
疚しい事は無いからと、一緒にいた繁明が私の親に帰りが遅れた理由を説明し謝罪してしまったから、
私達は学校以外で会いづらくなった。
異性と遅くまで二人きりでいるのは軽薄だと親は私達を罵る。そういう関係ではないと幾ら説明しても聞く耳を持ってくれない。
そう、私の話なんて聞かないのはわかっている。逆らって酷い目に遭うより、言いなりになっていれば平穏でいられると学習したから。
生きる意味がわからない日々の中を、それでも少しだけ明るく照らしてくれる光源に縋っていたのか。
浅はかな夢。
門限に間に合うまでの時間、ただ話して、歩いて、隣にいる時だけは嫌な事を忘れられた。
それも奪われて、射す光を失って暗くなった足元はすくむ。
小さな喜びを、私は持っても待ってもいけない。
みんな楽しそうに見えるけれど、窮屈で息苦しいのは私だけではない筈だから、
弱音を吐きづらい。
「昨日大丈夫だった?」
(続く👻)