何がどう引っ掛かるのかわからないまま、これ以上進むと道に迷いそうだったので戻る事にした。
で?それで私は、どうすべきか。急にわからなくなった。
帰る理由が、見当たらない。
取り敢えずサンダルを返さなければと御婦人のところへ行くと、何故かホッとした顔をされた。
「時間が経つとそこのドア開かなくなるから」
え?と思い試しに開けてみると、開いた。
「もしも、開かなかったとしたらどうなりますか」
「二度と帰れない」
そう言われてしまうと、帰りたいと思っていないのに[帰れるんだ、良かった]と少しだけ思ってしまう。
自分で、全てを諦めるという決断を下せない。
情けない、あれだけ居場所を求めてもがいてきたのに、チャンスが訪れた途端怯むのか。
私は御婦人に頭を下げ、家に帰る事にした。ドアから入り歩き進み、やはり狭くなってきて四つん這いになり進む。しかしいつまで経っても先が見えない。感覚的にはもう着いてもいい頃だと思った時、おでこに柔らかい物が当たった。
真っ暗だが手で探って確認してみると、
[………布団??]
空だったのにいつもの様にきっちり布団が詰まっている。仕方無く一枚一枚引っ張り出し、扉を押した。
押したのだが、開かない。何度押しても蹴っても駄目だ。
「あははははは」
開かないじゃないか。
戻る気になった自分が恥ずかしい。
厄介者は締め出されて当然だ。
これで決断出来る、
鍵を閉めてくれてありがとう。
再びあののんびりした田舎町へ行った。
違和感の理由はもうわかっている。
御婦人は笑顔で迎えてくれて、今度はピッタリサイズの合う靴を貸してくれた。すると、男性が近付いて来て…、
「よっ、飲み仲間!」
「………イケちゃん!?」
懐かしい、昔、もう一人入れて三人で夜な夜な飲み歩いていた。
「飲もーぜ」
「早速かよ」
イケちゃんは歌が上手かった。
亡くなって随分経つ。
私が此処にいるという事は、
現世にはいないのだ。
なんて、清々しいのだろう。
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地獄に行くつもりでいますが、
現実逃避で〈死後〉の妄想をしてみました……。
🍻👻