毒親への返報

毒親や虐待をメインに書いています。

彼女を攫う日③

どうせ僕には何も出来ない、わかっている。
彼女をさらったとして、家に連れて行って、親に「
あらお友達?いらっしゃい」と歓迎されて、数時間過ごして、帰すだけだ。
意味が無い。

でもそれでも良かったんじゃないか。
一時だとしても、

どうにかしようとしてくれる人を、

求めていたのではないか。

もし彼女が誰かの元で酷い目に遭っていたり、

もし生きていなかったら、


僕は。



一ヵ月程して、彼女は保護された。
逮捕された男は、人助けの為だったと話していると言う。

学校では、聞きたくもない好き勝手な想像の内容の話が溢れている。

しかし、そんな空気にみんな飽きてしまっても、彼女は学校に来なかった。

生きていると知って安堵したのは一瞬、
テレビ画面に映る逮捕された男の姿を観ながら、

それに縋るしかなかった、その前に、

何故僕がさらわなかったのだろう。

そんな独り善がりの自惚れを抱えたまま、
中学生活が終わった。


僅かな情報として、親元には戻らず、独身の叔母の家で暮らしているらしいとの事。

〈元気でいる〉と、彼女と仲の良かった女子達が話していた。

それくらいしか知り得ていない。


                  (続く👻)