後ろから、男の人の声がした。
「迷ったのかな。戻りたい所に案内するよ」
看護師の格好をした、まだ若そうな人。
「迷子になんてなってない。行き先が決まっていないだけ」
「??家族の人は?」
「家族は関係無い」
「えーと、子供一人にしておく訳には…」
「そうやって直ぐ親元に帰そうとする。不審者が出た時も、災害が起きそうな時も。親と一緒にいるのが一番安全だと勝手に決め付ける。何も考えてない、他人の事なんてどーだっていいんだよ。みんながみんな同じで、それが当然だと思って、ーーー」
「あぁぁ、ご、ごめんなさい。えーと、その、うーん、あっ、行き先は決まっていないんだよね。仕事もう終わりだから、僕とジュースでも飲みませんか」
「はぁ!?その間に親に連絡しようと思ってるんだ」
「君がそれを望まないのなら、しない」
「………」
「約束する」
「拉致とか誘拐とかするの」
「ええぇ!まさかそんな。その行き先について話でもしよう」
仕方無く折れたのは、やはり何処へ向かうのか先が見えていなかったからだ。
話をする場所は、エレベーターに乗って少し下って、降りて暫く歩いて、端の方にある扉の先。
中には女の人が一人いた。
(続く👻)