瞳の奥の、果てしない脆さ。
不安、寂しさ、無力さ、子供という立場の弱味、
どうしようもない勢力に流され、救いを求め手を伸ばす凪子に、
何も出来ずただ立ち尽くす壮亮。
[寂しい]
言葉の代わりに、そう物語っていた瞳。
それぞれへの手紙にも見せていなかった。
仕方が無い、
向こうで元気に過ごす事を祈るしかないと、車を見送った。
日々を重ねる事で、壮亮も寂しさは軽減していったが、
更に数年経ち、未だ何となく働き何となく生きていた壮亮。
自宅で虐待に関するテレビ番組をたまたま観ていた。出演者の顔出しは無いが、俄には信じ難い壮絶な内容ばかりが語られている。
父親からの性虐待、父親が付き合っている女からの暴力・暴言、自殺未遂、家出、
よく生きてきたなと辛くなりながらも、もう一本缶ビールを取りに行こうと立とうとしたところで、
テレビ画面には告白している女性の顔は映っていない。が、急に壮亮は画面に観入った。
本名も顔も隠されている、十代、髪は肩までは届かない、音声は変えられている、
情報はほぼ無い状態だが、
ただならぬ不安の様な気配の理由を、
壮亮は画面の中から必死に探した。
(続く👻)