僕は、ずぶ濡れで風呂場に立っている。
春に差し掛かっていても、動かしていない濡れた身体から熱が逃げて行き、
寒くて、寒くて。
おやつにスナック菓子を食べて、気付かず床にこぼしていたのか、それを踏んだお父さんが激昂し、
腕を掴まれ風呂場まで引っ張られ、頭から全身隈無く水シャワーを掛けられ、「いいと言うまで立っていろ」という事で、
今この状況だ。
寒い、しゃがんで丸くなりたい。
それがもう、誰も見ていなくても出来ない程、恐怖は植え込まれている。
お母さんが、風呂場に入って来た。
「あら、何してるの?」
それに答え様としたが、寒くて口が動かない。
僕が何をしているのか全く気にしていないのか、バケツの中で何かを洗い始めた。
洗剤の入った水をザッと流した時、勢いで床に広がり、僕の足まで届いた。
「ごめん、掛かった?」
水が掛かった事を気にしても、僕がずぶ濡れで立っている事は気にならないらしい。
洗濯を終えて、出て行った。
堪えられない状況だと思っているのは僕だけで、
これは、この家では普通らしい。
寒い。
(続く👻)