「お父さんがもういいって言ってるわよ。ご飯だから来て」
風呂場の外からお母さんがそう伝えに来た。
もう出ていいんだというホッとした気持ちから、何とか身体を動かす事が出来て、
濡れた服を着替えなければならないから、脱衣所にはタオルも何も無く、水分をたっぷり含んだ重い身体で、部屋までの廊下を歩いた。
惨めさを感じるのは、気の所為なのだろうか。
着替えてから、濡れた服を洗面台で絞っていて、ふと顔を上げて見た鏡に、お父さんが映っていた。
「おい、何で廊下が塗れてんだ」
弁解や許しを請う隙間も無く、髪の毛を掴まれ持ち上げられる様に風呂場に引き摺り込まれ、
近距離で顔に水シャワーを掛けられ、いや、掛けられると言うよりは、
何処に顔を背け様が、目と鼻と口の中に水を押し込まれ、目と口を閉じるが息が吸えず、堪え切れず呼吸がしたくて口を開けた途端、
ゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボ………………。
鼻の中と口の中、喉の奥や空気の通り道が水で一杯になって、
ーーー溺れ死ぬってこんなかなーーー
溺れた人は、苦しかったんだな。
惨めだと思うのは、自分だけかな。
僕は死ぬんだ。
(続く👻)