ザワザワとしたまま歩みを止めなかった所為か、覚束無くなっていた足が滑り、「あっ!」と声が出たと同時に身体が川の方に傾く。
「田中さんっ!」
そう私の名を叫んで私の腕を掴んだのは、
神尾君ではなかった。
「大丈夫!?田中さん、危なかったー。てか宇都宮君来てたんだ」
そう言って少し驚く神尾君。
宇都宮君は、私を引っ張って川から数メートル離し、足が地上にしっかりとついて立てているのを確認してからやっと強く掴んでいた手を離し、私と神尾君の間に入った。
「これ以上進むと危険だよ」
「いつから僕達を見てたの、声掛けてくれれば良かったのに」
戻る道、先頭が神尾君で次が私、後ろが宇都宮君。
来ていた事に全く気付かなかったのは、川の流れの音が気配事掻き消していたからか。
行くなと言っていた。宇都宮君は、何か勘付いていたのだろうか。
まさかそんな。
塾の仲間達の自殺と神尾君が関係しているとでも言うのか。
あの瞬間。宇都宮君に腕を掴まれた時、
数秒も確認出来ていないかもしれないけれど、
神尾君は私の方を向いていて、
一切手を差し延べ様とはしていなかった。
(続く👻)