「どうしてここに来たの」
「気になって。ごめん尾行して」
「神尾君を、疑ってる?」
「決定的な証拠は無い。ただ、いなくなった塾の仲間はみんな、神尾君と遊ぶ約束をしていた。偶然か必然か、わからないんだけど」
「私、無理矢理遺書を書かされた訳じゃない」
「うん。ーーー送るよ」
今がどういう状況か、ぼやっとして曖昧。
人を疑う事自体、汚い感情だ。
でも、もし宇都宮君が来ていなかったら、
私はもうこの世にいなかったのかもしれない。
それが恐怖なのかどうか、それすらはっきりしない。
宇都宮君に送って貰い、家で一人になってから、近くにあるのだと実感した。
死が。
死んでしまおうかな、なんて何となく思っていたのは、死が見えない程遠くにあったからで、
塾の仲間達がいなくなっても実感出来なかったのが、
掴まれていた腕の部分が熱くて、逆に生を感じる事で、
死が直ぐ傍にあるのだとわかった。
大切な場所なのに、これからどんな心持ちで塾に行けばいいのだろう。
何事も無かった様に、汚い感情も消え失せて、
三人で遊ぶ情景を、ただ想い浮かべていた。
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学校が終わってから塾に来て、……暫く経っても、
神尾君が来ない。
(続く👻)