「遺書?」
「念の為の練習。いざという時に何書こうって迷うかもしれないしさ」
「普通何て書くんだろう、考えた事も無かった」
今までありがとうとか?恨みつらみとか?
特に残したい感情も無いので、神尾君と笑いながらふざけて何枚か書いた。
もう少し歩いてみよう、という事になり、練習用のメモ帳をポケットに仕舞った神尾君の後を着いて行く。
少し下って行く感じで、川の流れの音が大きくなる。
足元に気を付けてと、神尾君が時々振り返る。
滑ったら川に落ちちゃうなーと、ーーーーーーーーーーーーーーーーーちょっと待って。
ちょっと待って。
私は歩きながら、思考だけ単独で歩かせた。
近付くと、川の流れは結構速い。落ちたら助からない可能性はある。落ちて死んだら、ーーーーー遺書を書いてしまった、という事は、自殺になる。いや、傍にいる神尾君が助けてくれる、助けを呼んでくれる、
……………急にザワザワと全身が嫌な感覚に包まれた。
亡くなった塾の仲間達が、死因は詳しく教えられていないが、早々に自殺と断定されたのは、
遺書があったからだ。
私も書いた、何で?
神尾君に誘われたから。
ヤギを見る少し前から、誰とも擦れ違っていない。
人気の無い森の中、
私と、神尾君だけ。
(続く👻)