毒親への返報

毒親や虐待をメインに書いています。

使者⑧

先生に、神尾君は辞めたと聞かされた。
そんな気配無かったのに。

宇都宮君が疑惑を追及しようとしたから、犯人扱いされたとショックを受けたとか、

それとも、逃げたとか。

また、汚い思考が脳内を巡り、嫌気がさして頭を振った。

内部で自殺者が相次いだ為、ここを辞めていった子は複数いるので、皆特に驚きはしないだろう。


「あのメモ帳を貸して欲しい。書いた分は要らないから」

塾の帰り、宇都宮君にそう言われた。

「いいけど。次持ってくる。何するの?」

「まだ解明すべき点は幾つかある。その一つが遺書で、聞けた限りではよくあるメモ用紙だったと」

「もう神尾君は辞めちゃったんだよ、疑うのって悪い気がする」

「……遺族は今どうしてると思う、小学生が自ら命を絶つなんて、どう納得したらいいんだ。うやむやにする程、軽い事じゃない」

「………」

返す言葉も無い。私は自分の事ばかりで、周りに心を寄せるなんて出来もしない。

あの子もあの子も死んだ。

それは普通の事じゃない。

悲しみを無視して現実逃避するのを、
宇都宮君は許してくれない。

「ごめん、田中さん。無理に巻き込んだりしないから」

「ううん、そうだよね。急に、二度と逢えなくなるって、辛い、よね」


たぶん、だけど。


               (続く👻)