先生に、神尾君は辞めたと聞かされた。
そんな気配無かったのに。
宇都宮君が疑惑を追及しようとしたから、犯人扱いされたとショックを受けたとか、
それとも、逃げたとか。
また、汚い思考が脳内を巡り、嫌気がさして頭を振った。
内部で自殺者が相次いだ為、ここを辞めていった子は複数いるので、皆特に驚きはしないだろう。
「あのメモ帳を貸して欲しい。書いた分は要らないから」
塾の帰り、宇都宮君にそう言われた。
「いいけど。次持ってくる。何するの?」
「まだ解明すべき点は幾つかある。その一つが遺書で、聞けた限りではよくあるメモ用紙だったと」
「もう神尾君は辞めちゃったんだよ、疑うのって悪い気がする」
「……遺族は今どうしてると思う、小学生が自ら命を絶つなんて、どう納得したらいいんだ。うやむやにする程、軽い事じゃない」
「………」
返す言葉も無い。私は自分の事ばかりで、周りに心を寄せるなんて出来もしない。
あの子もあの子も死んだ。
それは普通の事じゃない。
悲しみを無視して現実逃避するのを、
宇都宮君は許してくれない。
「ごめん、田中さん。無理に巻き込んだりしないから」
「ううん、そうだよね。急に、二度と逢えなくなるって、辛い、よね」
たぶん、だけど。
(続く👻)