実は塾にメンタルケアの専門家が数回来て、私も話をしたが、特に何も変わらない。要するに、私は精神が不安定にはなっていないらしい。
宇都宮君は長く何度も話した様だ。
具体的に、神尾君の事も。しかし、メモ用紙は一般的に誰でも使うし、元々持っていた物か調べるのは簡単ではなく、やはり遺書が直筆だという事と、
何より、一人の子供が何人もを死に導くなんて事を、出来る訳が無い。
と、言われてしまったらしい。
警察や遺族の元へ行く事も考えたそうだが、親にきつく止められ、諦めるしかなかったと言う。
これで、永遠にうやむやのまま。
ーーー神尾君は、死の使者だったのだろうか。
私の元へ来て、遺書まで書いて、後は死へ向かうだけだという知らせを持って来てくれたけど、
という事は宇都宮君が、生の使者か。
二人が鉢合わせて、運命が乱れて、私は一人残された。
どちらの使者を、私は待っていたのだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
頭の良さに差があり過ぎて、進む路は離れていったが、
成人した今も、生の使者は時々現れる。
ぼんやりと[死んでしまおうかな]と過る気配を、掻き消しに。
「久し振り、田中さん」
「うん久し振り。宇都宮君そろそろ顔出すかなーって思ってた」
「ウザい?」
「ううん。何か食べに行こう、稼いでるんでしょ?」
「はぁ……」
大人になっても、変わらず塾の仲間という感じの私達。
変わらず、宇都宮君は伝達しに来てくれる。
生きる事を。
💙 ✉ 💛 👻