毒親への返報

毒親や虐待をメインに書いています。

使者⑨

実は塾にメンタルケアの専門家が数回来て、私も話をしたが、特に何も変わらない。要するに、私は精神が不安定にはなっていないらしい。

宇都宮君は長く何度も話した様だ。
具体的に、神尾君の事も。しかし、メモ用紙は一般的に誰でも使うし、元々持っていた物か調べるのは簡単ではなく、やはり遺書が直筆だという事と、

何より、一人の子供が何人もを死に導くなんて事を、出来る訳が無い。

と、言われてしまったらしい。

警察や遺族の元へ行く事も考えたそうだが、親にきつく止められ、諦めるしかなかったと言う。

これで、永遠にうやむやのまま。

ーーー神尾君は、死の使者だったのだろうか。

私の元へ来て、遺書まで書いて、後は死へ向かうだけだという知らせを持って来てくれたけど、

という事は宇都宮君が、生の使者か。

二人が鉢合わせて、運命が乱れて、私は一人残された。


どちらの使者を、私は待っていたのだろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


頭の良さに差があり過ぎて、進む路は離れていったが、
成人した今も、生の使者は時々現れる。

ぼんやりと[死んでしまおうかな]と過る気配を、掻き消しに。

「久し振り、田中さん」

「うん久し振り。宇都宮君そろそろ顔出すかなーって思ってた」

「ウザい?」

「ううん。何か食べに行こう、稼いでるんでしょ?」

「はぁ……」

大人になっても、変わらず塾の仲間という感じの私達。


変わらず、宇都宮君は伝達しに来てくれる。


生きる事を。


          💙 ✉ 💛    👻