宇都宮君に行くなと言われた事を、私は直ぐに気にしなくなった。真面目な人からすれば、遊んでいないで勉強しろ、という感じなのだろう。
土曜日、待ち合わせは人混みを抜けた然も無い道の途中。何故こんな所で?と思ったが。
「ほら、草刈り要員で草原にヤギがいるよ」
「ほんとだ、可愛い!」
晴れていて、緑の草原と白いヤギが輝いていて、和む。
草むらの中の細い道を入る。森の奥へ続くが、終始陽射しが差し込み明るい。
鳥達の声と、水が流れる音がする。
十分程歩いて止まる。水の音は、崖下数メートル程のまぁまぁ流れの速い川。
「マイナスイオンだねー」
「うん」
大きな丸太を横にして上を平らにしただけの腰掛けを、神尾君は手でパッパッと払い、私を座らせる。
暫く川や緑を眺めてから。
「僕は意気地無しなのか。こうやってのうのうと生きているのは」
「……………」
私も、漠然と死がちらついているだけで、本当に死ぬ勇気は、きっと無い。
何処かへ行ってしまいたい、でも誰も、
連れ出してくれたりはしない。
神尾君はポケットからメモ帳とペンを取り出して、丸太の上に置いた。
「遺書を書く練習をしよう」
(続く👻)