毒親への返報

毒親や虐待をメインに書いています。

使者③

宇都宮君に行くなと言われた事を、私は直ぐに気にしなくなった。真面目な人からすれば、遊んでいないで勉強しろ、という感じなのだろう。

土曜日、待ち合わせは人混みを抜けた然も無い道の途中。何故こんな所で?と思ったが。

「ほら、草刈り要員で草原にヤギがいるよ」

「ほんとだ、可愛い!」

晴れていて、緑の草原と白いヤギが輝いていて、和む。

草むらの中の細い道を入る。森の奥へ続くが、終始陽射しが差し込み明るい。

鳥達の声と、水が流れる音がする。

十分程歩いて止まる。水の音は、崖下数メートル程のまぁまぁ流れの速い川。

マイナスイオンだねー」

「うん」

大きな丸太を横にして上を平らにしただけの腰掛けを、神尾君は手でパッパッと払い、私を座らせる。

暫く川や緑を眺めてから。

「僕は意気地無しなのか。こうやってのうのうと生きているのは」

「……………」

私も、漠然と死がちらついているだけで、本当に死ぬ勇気は、きっと無い。

何処かへ行ってしまいたい、でも誰も、
連れ出してくれたりはしない。


神尾君はポケットからメモ帳とペンを取り出して、丸太の上に置いた。

「遺書を書く練習をしよう」


               (続く👻)