いつもトンボが飛んでいた。
そういう時季に此処へ来ているから。
山の中の赤トンボは鮮やかに赤くて、辺りは昼下がりでも明るかったり暗かったり、
陽光が射しても、実は怖い。
霊感は無い、魂が浮遊する様を目撃している訳でもない、
墓地というだけで恐れるなんて本当は失礼な話だ。
人が死ぬ、お墓に入る。
ただそういう流れ。
その流れを辿らない人もいる事を、
子供の頃は余り考えない。
セミが鳴く。
民家も遠い山の中、野生動物もいただろうに、逢えないものだ。
リスがいるかもしれないと夢を描いたら、父に酷く馬鹿にされたので、
そんな事を言うのを止めた。
夢も未来も期待も諦めざるを得ない。
トンボには死者が見えているのか。
ふと、何処でそんな言葉を覚えたのか、
この山の中ならもしかして、
摩訶不思議に忽然と消えると言うーーーーーーーーーー。
(続く👻)