今夜は空を眺められない。
隙間無くカーテンを閉めて、出来るだけパワーを遠避ける。
今、夜空には低い位置に、
大きくて暗い、
赤い月がいる。
『飲みに行こーぜ』
「今日は遠慮しとく」
飲み仲間からの誘い、行きたくても外に出られない。
『付き合ってよ、奢るし』
「月が出てる、気持ち悪いのが」
電話の向こうで、月を探している気配が伝わる。
『あぁ出てるね、で、何処が(気持ち悪いの)?』
「だって汚い色だよ」
『見なきゃいーじゃん』
「視界に入るんだよ、デカイから」
『確かに…、デカイな』
「だから今日は無理」
『ふぅん、じゃあ次はこれ(今見ている月)が出てない日に』
「うん、またね」
電話を終えて、この意味不明に聞こえるだろう行けない理由に、沈み込む。
カーテンの向こう、あの月。
汚れた、血の色だ。
(続く👻)