警察沙汰にはしたくない。
家には帰らない。
この二つだけを主張した。
気を失ったのは一時だけ、暴力は普段から然程受けていないという事で、警察沙汰にはならずに済んだ。
父親の豹変を第三者が目の当たりにした事で、取り敢えず施設での生活が続く。
世間体を気にして僕を連れ戻そうとしていた両親も、今回の事でばつが悪くなったのか、静かになって姿を見せなくなった。
まぁ、大人同士集まって話し合いくらいはしているのかもしれないが、
何だっていい、家に帰らないで済むのなら。
学校では、クラスの数人に施設から通っているのがバレたが、説明が面倒なので「お兄ちゃんが病気がちで親が忙しいから」と誤魔化したりして流した。
ーーーいいよね、家に帰らないって。
死ぬ事も考えたあの時から、随分と落ち着いてきて、何より、笹井さんと会える様になったのが嬉しい。
最初の頃は、関係性がはっきりしない事もあって、施設の人も自由に会わせていいのかどうか?がよくわからなかったらしいが、どうやらその答えは稲村さんが出した様で。
「深鳥君がピンチの時、唯一助けを求める事が出来た相手が、笹井君です。深鳥君が望むなら、会わせてあげて下さい」
今は、いつでも会える。
そんな落ち着いた日々の中、
突然、お兄ちゃんが一人で、施設に来た。
(続く👻)