「手の中に何を持ってるの?」
何も持っていないよ。
そもそも僕は持たないし、元々持ってる物も無い。
だから、重くないから、足元がフワフワしてるだろ。
それでも君は、僕が何かを握っていると言う。
無いんだよ。空っぽで、このまま生きているのが申し訳無くて、焦っているくらい。
追い立てられている。
直接的な言葉を使わなくても、いくらでも、
人は人を殺せるんだ。
あぁ、ごめんね。こんな意味不明な暗い話、聞きたくないよね。
君はそんなに頑固だったかな、
ほら、何も持ってないだろ?と掌を開いて見せた。
「ほこり」
ヤバい手が汚れていたのか。パンパンと叩いて埃を払う。
持てるのは、埃くらいか。
「やっぱり持ってた」
君は笑った。いやだから手が汚くて……、
「誰が何と言おうと。あなたの優しいところが大好き。誇りに思っていいよ」
ほこり。
僕には見えない物。
大好きなんて、聞き慣れない、無関係な言葉だと。
「もう一回言おうか?」
君は、僕の手を握った。
誇りという感触は、…きっとこんな感じなのかな。
💕 👻