「誰か、私をさらってくれないかな」
そう言った君の隣にいたのは僕だから、誰かとは自分の事だったらどうしようと勝手に戸惑い、何も言葉が続かなかった。
中学に入って同じクラスになって、初めて顔を合わせた。
友達と言えるのかすらわからない、たまたま近くにいて僕がボーーッとしていれば、君は好き勝手に喋っている。
〈今〉が嫌になるのは何となくわかる、親や教師の声が何故こんなにも耳障りに脳に届くのだろう。
全てが面倒になって逃げ出したくなるが、
行動を起こすのは更に面倒くさい。
「中学生なんて、何処にいればいいんでしょーねー」
「家とか、学校とか、そこら辺とか」
「何なのそれ地味」
「仕方無い、ガキなんで」
「よくさ、〈人助け〉と称して未成年を監禁しているオジサンいるじゃない。必ずしも殺す訳じゃなく、親に身代金を要求する訳でもなく、何がしたくて家に閉じ込めておくんだろうね」
「変態の考える事はわからない。まぁ…、支配して好きな様に扱える存在が欲しいとか」
「どっちがいいかなぁ、家にいるのと変態オジサン家に行くのと」
「止めろよ」
「何を、どっちを?」
「…変態オジサン?」
「家にいたって親に支配されて好きな様に扱われている子はいっぱいいるんだよ」
(続く👻)