人は何故か、初めての事に恐れを成す。
私は今、トイレから出る事が出来ない。
お腹は痛くない、吐き気もしない、閉じ込められている訳でもない。
好きで籠城はしていない。
夜中にひたすら、トイレの中でやる事は何も無く、唯一、照明がセンサー式の為動かないでいると真っ暗になるので、時々首や腕を動かす。それだけだ。
お盆で姉家族が帰省している。
父・母、義兄・甥・姉、全員がお風呂に入ったら、最後に私。
誰かが入った後のお湯には浸かれないのでシャワーだけ、風呂掃除は私の仕事なので[これだけの人数が入った浴槽の掃除は恐ろしい]などと思いながら、風呂場を出ると。
バサッ。
聞き慣れない音がする。
ここは洗面所。音は廊下を挟んで向かいの和室か、その隣のリビングか、はたまた台所か。
バサッ。
寝室は二階にあり、全員もう寝ている筈。
何の音かわからない。
例えるなら、ペットボトルが入ったビニール袋を、無造作に床に落とす感じ。
それともう一つ。
ーーーーーいや、これは、実際聞いた事がある訳でもないのに、何故、そう想像してしまったのか。
バサッ。
人体を、切断している。
私は怖くなって、トイレに逃げ込んで鍵を掛けた。
(続く👻)