夜が明けた。
「逃げるぞ、朝に毒撒くんだろ」
最初に声を掛けたヤスデが、私に避難を促す。
「私はここに留まります」
「ヤスデなんて毒で呆気無く殺られる」
「はい、構いません」
「ふーん、裏の家の敷地内に行ってるから、気が向いたら来ればいーじゃん」
「ありがとうございます」
みんな、移動して行った。
これから、毒が撒かれる。
私はヤスデ。
呆気無く殺られるのだ。
人間は駆除対象ではない。迷惑でも人に危害を加えても病気で苦しんでいても、全て生かす方向に進む。
殺人事件が起きても、被告が全員死刑になる訳ではない。
でも虫は、簡単に駆除される。
声が聞こえる、
やっとこの時が来た。
今まで何度、自分を終わりにしようとして失敗してきたのだろう、
これで最期だ。
散々私を蔑んできた人達が、苦々しい顔をしながら毒を撒くのだろう。
性悪な事を言うが、毒でもがき苦しむところだけ人間の姿に戻り見せてやりたいものだが、
私はヤスデ。
どうせ気付かれない。
それはそうと、声がしたので毒を撒きに来ている筈だが、何処だ?他のヤスデ達は逃げて、土だけが延々と広がり、大小の山々の隙間を彷徨うが、
身体が小さ過ぎて、庭全体を把握出来ない。
それでも毒は風に乗って、
私を駆除してくれるだろうか。
(続く👻)